3年以上の生死不明
夫婦の離婚原因にはいろいろありますが、法律上、3年以上の生死不明の場合には離婚が出来ると定められています。
3年以上の生死不明で離婚する場合には、どのようなケースがあるのでしょうか。また、3年以上の生死不明を理由として離婚する場合の方法も知りたいところです。
今回は、法定の離婚原因の1つである、「3年以上の生死不明」について解説します。
1.3年以上の生死不明とは
「3年以上の生死不明」とは、相手方配偶者が生死不明のまま連絡を絶って、音信不通になっている場合です。例えば家出や事故、災害などで一切連絡が取れなくなる場合などがそれに該当します。
生死不明であることが必要なので、生きていることはわかっているけれども行方不明などの場合には、これには該当しません。
また、3年以上の生死不明という場合、いつから3年が経過していることが必要になるのかも問題になります。 この場合の3年の計算は、最後に相手方配偶者と連絡をとったり音信があった時点,つまり相手方配偶者の生存が確認された最終時点から開始します。相手方配偶者が最終的に消息を絶ってから3年が経過した時点で、3年以上の生死不明が認定されることとなります。
2.3年以上の生死不明という場合に離婚する方法
相手方配偶者の3年以上の生死不明が認定されるためには、どのような手続を執れば離婚することができるのでしょうか。
この場合には、相手方がいないわけですから協議離婚や調停離婚はできません。よって、離婚訴訟を起こして裁判離婚をする必要があります。
ただ、裁判離婚をする場合,日本の離婚制度では、離婚訴訟を提起する前に離婚調停を申立てなければならないことになっています(家事審判手続法257条1項)。これを調停前置主義といいます。よって、相手方が音信不通であっても、原則的として形式的にだけでも離婚調停を申立てなければなりません。この場合、裁判所の判断によっては、調停手続を省略できるケースもあります。
また、離婚訴訟において3年以上の生死不明による離婚を認めてもらうには、本当に3年以上生死不明となっている証拠が必要です。裁判では、証拠により裏付けられない事実は認定してもらうことができないからです。
その証拠としては、例えば,警察への捜索願やその受理証明書、相手方配偶者の元勤務先,友人・知人による陳述書、これらの者の証言などが考えられます。警察に捜索願を出して精一杯探す努力をしたがどうしても見つからなかったということを示したり、勤務先や友人・知人から「〇〇氏については、いついつ以来1度も見かけていない、連絡していない」と陳述してもらいます。
相手方配偶者が事故や災害によって生死不明になってしまった場合には、その事故や災害に関する資料や、相手方配偶者がそれに巻き込まれた可能性が高いことを示す資料なども必要になります。
これらの証拠がそろっていれば、相手方配偶者の3年以上の生死不明という離婚原因が認められ、離婚することができます。
3.相手方が生きている場合には「悪意の遺棄」になる
一方で,相手方配偶者が生きている場合には,3年以上の生死不明を原因とする離婚はできません。この場合には、別の離婚原因が問題になります。それは「悪意の遺棄(民法770条1項2号)」です。
相手方が生きているにもかかわらず、正当な理由なく夫婦の同居義務や扶助義務を無視している場合には、悪意の遺棄があるとして、法律上当然に離婚できます。
悪意の遺棄が原因で離婚できる場合には、相手方配偶者との音信不通期間が3年以上である必要はありません。数ヶ月程度でも、離婚できることもあります。
まとめ
離婚原因には、「3年以上の生死不明」という法定の離婚原因があります。3年以上の生死不明とは、相手方配偶者が生死不明である必要があり、生きている場合には適用されません。また、3年の起算点は、最後に相手方配偶者に連絡をとった時点です。 3年以上の生死不明を理由として離婚する場合には、離婚訴訟を起こす必要があります。この場合、生死不明を証明するための証拠が必要になります。