不倫をした夫/妻が離婚をしたいと言ってきた

悩む男性 浮気が発覚し、それを問い詰めたら相手に「他に好きな人ができた。離婚してほしい」と言われた。 これからの生活はどうしたらいいのか、子どもの養育費はどうするのか、何より、今までの自分は何だったのかと、いろんな思いや不安がめぐってくるでしょう。 そもそも、浮気をしたのはあっちなのに、一方的に離婚したいなんて身勝手が認められるのかそう考える人もいると思います。

婚姻関係の破たんに専ら又は主として責任ある配偶者のことを「有責配偶者」といいます。 浮気や不貞行為が婚姻関係の破たんを導いたものであれば、この浮気や不貞行為をした配偶者が「有責配偶者」となります。 ここで重要なのは、有責配偶者から離婚請求することは原則として認められないということです。 つまり、離婚をするのか、しないのかの決定権は、あなたにあります。
今回は、離婚をするか否かの選択を迫られた際のポイントを紹介します。

離婚を急ぐ必要はありません

有責配偶者から離婚を切り出された場合、離婚をするかしないかの決定権はあなたにあります。 したがって、有責配偶者が「早く離婚してほしい」など言ってきたとしても、焦って離婚をする必要はありません。 不貞行為が原因で、別居に至った場合であっても、その期間の生活費を婚姻費用として請求することもできます。 離婚はしたくないけど、不貞をした二人(有責配偶者とその相手方)にはちゃんと責任を取ってもらいたいという場合には、不貞行為に対して慰謝料を請求することもできます。 離婚をするとなると、決めなければいけないことがたくさんありますし、今後の生活の不安も大きいと思います。 焦らず、じっくりと考えて判断しましょう。

離婚を迫られて離婚届にサインをしてしまった場合

離婚届を記載する男性 自分は離婚したくないのに、不貞行為をした有責配偶者から「早くしろ」「お前と別れるのなんて簡単だ」など威圧をされて離婚届にサインをしてしまったということも少なくありません。 そのような場合は、すぐに市(区)役所へ行って「離婚届不受理申出書」を提出してください。 これを提出することで、記入済みの離婚届でも市(区)役所で受理することができなくなります。 もちろん、脅されて離婚届にサインしてしまった場合、裁判で離婚が無効であったことを主張して、婚姻関係が継続していることを認定してもらうこともできます。 ただ、裁判となると手間も時間かかります。 そのような場合は、一度弁護士に相談をした方が良いでしょう。

離婚をしてほしい(有責配偶者)側の場合

有責配偶者側の離婚請求が認められる場合とは?

有責配偶者が離婚を申し出たとき、調停の話し合いでまとまらずに裁判になった場合に、離婚は認められるのでしょうか。 これは、一般的にいうと、離婚が認められる可能性は非常に低いといえます。 古い判例では、不貞行為によって夫婦関係が破たんしたのに、自分は愛人と新しい家庭を作りたいという主張はあまりに身勝手だとして、有責配偶者からの離婚請求は認められませんでした(最高裁判例昭和29年11月5日民集8巻11号2023頁)。
しかし、その後、判例が変更され、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められないが、3つの要件を満たしている場合は認められ得るようになりました(最高裁大法廷判決昭和62年9月2日民集41巻6号1423頁)。
その要件とは次のようなとおりです。

  • ① 夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
  • ② 夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
  • ③ 相手配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状況におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと

①の要件に関して、裁判例では別居期間が「10年」を超えるような事案であれば「相当の長期間」であると判断することが多いと思われます。
別居期間が10年未満の場合に「相当の長期間」と判断されるかは事案によって分かれると思われます。 例えば、夫60歳、妻57歳、同居期間22年、別居期間8年程度の事案において、「別居期間が相当の長期間に及んでいるものということはできない」として、離婚を認めなかった裁判例があります(最高裁判決平成元年3月28日判時1315号61頁)。
一方で、夫52歳、妻55歳、同居期間23年、別居期間8年程度の事案において、別居期間が相当な長期間に及んだと判断された裁判例もあります(最高裁判例平成2年11月8日判時1370号55頁)。
後者の事例では、有責配偶者である夫が、別居後において妻や子に対する生活費を負担していたこと、別居後間もなく不貞の相手方との関係を解消していたこと、離婚請求する際に妻に対して財産関係の清算について相応の誠意ある提案をしている一方で、妻は婚姻継続を希望しながら夫名義の不動産について仮処分の執行をするに至っている等の事情がありました。 このことから、別居期間が10年未満の場合に「相当な長期間」と判断されるか否かは、別居期間と夫婦双方の年齢・同居期間とを単に数量的に対比するだけではなく、有責性の程度、別居後の夫婦双方の対応等を考慮して判断されているものと考えられます。

②の要件に関して、高校2年生の子(未成熟の子。4人兄弟の末っ子・三男。)がいる場合でも有責配偶者(夫)からの離婚請求を認めた裁判例があります(最高裁判例平成6年2月8日判事1505号59頁)。 この事例では、子4人のうち3人が成人して独立していること、この三男は3歳の幼少期から一貫して妻の監護下で育てられまもなく高校を卒業する年齢に達していること、夫は妻に毎月15万円の送金をしていた等の事情がありました。
このように、②の要件においても、①と同様に、未成熟子が存在するか否かという単純な基準ではなく、未成熟子がいたとしても、その他の事情も考慮して離婚請求が認められるか否かを判断しています。 なお、ここでいう「未成熟の子」というのは、未成年の子とイコールではありません。成年(満20歳)に達していても、身体的障害により親の監護が必要な子は未成熟子に含まれます。

①と②の要件が満たされれば、基本的には、離婚を請求された配偶者の経済的不利益は、財産分与又は慰謝料により解決すべきものでありますから、有責配偶者の離婚請求は認められる方向に傾きます
もっとも、①と②の要件を満たしたとしても、③の要件のいう「特段の事情」が存在する場合、尚その離婚請求は認められないことになります。 ③の要件が想定するのは、離婚に伴う経済的給付が不十分である場合等です。

このように、この①から③の要件も、単に形式的、数量的に判断されるのではなく、様々な事情を考慮して判断されるので、 自分で手続きを行う前に、弁護士に相談した方が良いでしょう。


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