協議離婚

離婚をするには、どのような手続をとるのでしょうか。まず思い浮かべるのは、市区町村の役所に「離婚届」を提出することではないでしょうか。
この点、日本には離婚する方法が4種類あります。それは「協議離婚」、「裁判離婚」、「調停離婚」そして「審判離婚」です。
このいずれの離婚方法でも、「離婚届」を提出する必要があります。
ただ、その意味合いが異なります。

1.協議離婚とは

日本における離婚は「協議離婚」が最も多いのですが、これはどのような手続なのでしょうか。

日本では、8割以上の離婚のケースが協議離婚

離婚届を記載する男性 協議離婚とは、夫婦が離婚することを合意したうえで、お互いが離婚届に自分の署名・押印をして、できあがった離婚届を市町村の役所に提出することによって成立する離婚のことをいいます(民法763条)。日本では、離婚する夫婦の8割以上が協議離婚であるといわれています。
協議離婚する場合には、夫婦が話し合って離婚することに合意し、離婚届を記入して役所に提出すれば、それだけで離婚することができます。
財産分与をいくらにするとか、子どもの面会交流の方法をどのようにするかなど、詳細な事項を決めなければならないというわけではありません。

ただし、夫婦に未成年の子がいる場合には、その親権者を夫婦のいずれにするかを決めなければなりません。 離婚届には未成年の子どもの親権者を記入する欄があります。これをきちんと記入しないと、役所は離婚届を受け取ることをしません。

2.協議離婚で離婚条件を決める

では、「協議離婚」をする際、何に注意すべきでしょうか。

離婚する際には、親権者を誰にするかという問題以外にも、養育費や慰謝料、財産分与などさまざまな問題が起こりがちです。 裁判離婚や調停離婚の場合には、財産分与や慰謝料などの問題も、離婚するか否かという問題と一緒に検討されることが多いです。 そして、裁判等の過程において、お互いが離婚することについては概ね争いがなくなったとしても、慰謝料の金額で歩み寄れない場合などには、なかなか裁判等が終結しないという事態も起きうるところです。
しかし、協議離婚をする場合には、お互いが合意のうえ離婚届さえ提出すれば離婚できるので、慰謝料などの個別の事項を特別決めることなく、離婚だけをするという方法も簡単にとることができます。

もっとも、協議離婚の場合であっても、事前に慰謝料や財産分与などの個別の事項を決めておかないと、離婚後に相手方から請求されることは十分考えられます。 例えば、不貞によって婚姻関係が破綻したという場合の慰謝料は離婚後3年の経過をもって時効により消滅しますので、不貞をした元配偶者は離婚後3年間相手方から慰謝料請求されるリスクを負うことになります。 また、財産分与請求権は離婚後2年の経過をもって時効により消滅しますので、その間、元配偶者から財産分与を求める調停などが起こされる可能性があります。また、相手方が未成年の子どもの親権者である場合、養育費を求める調停が起こされる可能もあります。

このように、協議離婚の際にきちんと個別の事項を決めておかないと、離婚後に争いが起こってかえって手続が煩雑になってしまうおそれがあります。
よって、協議離婚の場合にも、きちんと個々の事項について話し合い、それらの事項に関して、夫婦の間で合意をしておく必要があります。

3.協議離婚書を作成する!

協議離婚の場合であっても、財産分与や慰謝料、養育費など個々の事項についても話し合って決めておく必要があることはわかりました。 このような事項について合意をしたら、必ずその内容を「協議離婚書」という形で書面に残しておきましょう。
なぜなら、せっかく個々の事項について合意をしたとしても、その内容を書面にしておかなければ、後になってから相手方から「そんな話はなかった。」と言われて争いになってしまうおそれがあるからです。 つまり、その合意内容を証拠として残しておくのです。

協議離婚書の作成や、協議離婚の際の個別事項に関する条件交渉については弁護士に依頼することができます。 自分たちで手続できない場合には弁護士に依頼するのがよいでしょう。
また、協議離婚書を作成する場合には、「公正証書」の形にしておく方法がおすすめです。 公正証書にしておくと、原本が公証役場に保管されるので紛失の危険性がないですし、偽造や変造のおそれもありません。
さらに、「公正証書」に強制執行認諾文言をつけておけば、相手方が養育費や慰謝料などの支払いを滞納した場合、裁判を起こさずに、すぐに相手方の財産に強制執行(差し押さえ)をすることができます。

以上のように、協議離婚する際には、きちんと個別の事項について取り決めをして、「公正証書」という形で協議離婚書を作成しておくと、言った言わないの紛争を回避することができるとともに、慰謝料などの滞納があった際に直ぐに対応することができるので、メリットが大きいです。

まとめ

協議離婚とは、夫婦が話し合って離婚することに合意したうえで、離婚届に署名・押印し、役所に離婚届を提出することによって成立する離婚のことをいいます。 協議離婚をする場合には、慰謝料や財産分与などの個別の事項を決める必要はありません。 ただし、後のトラブルを避けるためには、これらの事項を決めて協議離婚書を作成すべきです。
その場合、公正証書を利用しましょう。


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