調停離婚について
夫婦が離婚する場合の離婚手続の方法には「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4種類あります。このうち、「調停離婚」は、裁判所における調停手続を利用して離婚をする方法です。
では、具体的に、調停離婚とはどのようなものなのでしょうか。離婚調停を申し立てるとどのように手続きが進んでいくのかのイメージができていないことも多いですし、調停離婚する場合の注意点なども知りたいところです。
今回は、調停離婚について解説します。
1.調停離婚とは
調停離婚とは、家庭裁判所での夫婦関係調整調停(離婚調停)を利用して、夫婦が離婚について話し合い、離婚する方法です。
日本における離婚の事例は、夫婦が離婚することに合意したうえで、離婚届けを役所に提出することによって離婚が成立するという「協議離婚」の方法が最も多いですが、一方が離婚に同意しない場合や、慰謝料や財産分与などの点で激しく対立する場合には、互いに話し合っても解決が見込めないことがあります。
また、相手方配偶者と連絡をとることができなかったり、相手方配偶者からDVを受けているなどして、実際上または事実上、当事者同士の話し合いをすることができないケースもあります。
このような場合には、協議離婚によることは難しく、離婚をするためには、別の手段を用いる必要があります。ここで、別の「手段」は「裁判を起こすこと」ということを思い浮かべるかもしれません。
しかし、いきなり離婚裁判を起こすことはできません。裁判を起こすとしても、その前に調停を経なければならないのです(家事事件手続法257条1項)。
このように、協議離婚をすることができない場合は、次のステップとして「調停離婚」を利用することになります。 調停離婚をする場合には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所において、離婚調停(夫婦関係調整調停)の申立てをすることになります。
2.調停離婚の進み方
家庭裁判所に離婚調停を申し立てた場合、具体的にどのように手続きが進んでいくのでしょうか。
離婚調停では、裁判所の調停委員を介して夫婦が話し合いをすることになります。調停委員は、通常男性1名、女性1名の合計2名です。
そして、話し合いは、調停委員を介して交互に行われることになりますので、基本的には、相手方配偶者と直接顔を合わせることはありません。
当事者の待合室も「申立人」と「相手方」とで別れております。また、DV事案のように相手方配偶者と顔を合わせることが不可能である場合には、当事者同士が廊下などで顔を合わせることがないよう待合室を別棟にする等、裁判所が色々と配慮をしてくれます。
このようにして、お互いが顔を合わせることがないので、相手方配偶者の前では自分の意見を言うことができない人でも、きちんと自分の希望や意思を調停委員を介して伝えることができるのです。
また、離婚やその条件に関して、調停委員から提案があったり、一方への説得があったりします。そのため、当事者だけの話し合いでは感情的になってしまう夫婦であっても、離婚調停を利用すれば、離婚のための諸条件について合意できる可能性が高まります。 そして、離婚調停が成立したら、家庭裁判所で「調停調書」が作成されます。調停調書というのは、申立人と相手方が離婚をすることや、合意した諸条件が記載された書面のことです。 調停調書に「申立人と相手方は、本日、調停離婚する。」とあれば、調停が成立したその日に、法律上、離婚が成立したことになります。「離婚届」を役所に提出することによって成立する協議離婚とはこの点が異なります。
3.調停離婚の場合であっても「離婚届」を提出する必要がある
調停が成立したら、後日、家庭裁判所から調停調書が送られてきます。先ほど説明したように、調停が成立した日に離婚は成立しているのですが、調停調書が作成されただけでは、あなたの戸籍は変わりません。離婚したことを戸籍に反映させるためには、別途、役所に「離婚届」を提出する必要があります。
この離婚届は、離婚を成立させるためのものではないので、「報告的届出」といわれたりします。
この場合の離婚届は、元夫婦のどちらか一方が提出すればよく、原則として、離婚調停を申し立てた側が提出することになります。
もっとも、調停調書に「申立人と相手方は、相手方の申し出により、本日、調停離婚する。」とあれば、相手方が提出することになります。
具体的には、調停調書が送付されてきた後、この調書と離婚届を市町村役場に提出します。
この際の離婚届は、一方の署名押印のみで足ります。他方の署名押印は必要ありません。
つまり、一方だけで「離婚届」を作成すればよいのです。
結婚の際に氏(名字)を変更した側は、離婚により婚姻前の氏(旧姓)に戻ります(もっとも、この点については離婚後3か月以内に届け出ることによって離婚の際の「氏」を維持することができます。)。
そのため、氏を変更した側は、離婚により婚姻時の戸籍から除かれるため、以前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るかを決めなければなりません。
この点については、「離婚届」にどちらを選択するかの記載欄があります。
このようなことを決めなければならないので、実際上、氏を変更した側が離婚届を提出しに行くことが多いと思われます。
そして、日本では結婚を機に氏を変更する側は妻であることが大部分ですので、離婚届を提出するのは、元妻が多いということになります。
また、離婚調停の調停調書は、調停成立後10日以内に役所に届出をしなければならないという決まりがあります。
これより遅くなると、過料などの制裁を受ける可能性もあるので、離婚調停が成立した後は早めに届出をするように注意しましょう。
まとめ
調停離婚とは、家庭裁判所の離婚調停手続を利用する離婚方法です。
調停離婚では、裁判所の調停委員を介して話し合いが行われますので、相手方配偶者と直接顔を合わせる必要がありません。
離婚調停が成立したら、調停調書が送られてくるので、この調書と「離婚届」を市町村役場に提出します。
離婚届は調停成立後10日以内に行う必要があるので、注意が必要です。